ライブでボーカルエフェクターを使う際の注意点

ボーカル

ボーカルエフェクターってかっこいいよな!足元で踏んでよう!声変わるんだぜ!使ってみたいから買うぜ!

最近ではギターのコンパクトエフェクターのように気軽に簡単にボーカルエフェクターも買えるようになってきましたね。気軽に買えてしまうが故に、デメリットがあることを知らず導入する方も多い印象をうけますのでボーカルエフェクターをライブで使う際に知っておいてもらいたいことを説明します。

ボーカルエフェクターは以前まではPA機器として業務用で値段もそこそこするラック式が多かったですが、今ではギターのエフェクターを買う感覚で楽器店で手頃な価格で購入できます。
技術の進歩で誰でも簡単に使えるようになったのはいいですが、扱い方によってはライブでの音の作り方やバランスがこれまで通りいかなることもありますので、そのあたりを理解してもらいたいので記事にしました。

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ボーカルエフェクターを使うメリット

まずメリットから紹介します。
もちろん使ってみたいと思う人はエフェクトをかけて声を変えられるということを目的に導入するでしょう。未だ勢いは衰えないPerfumeみたいなケロケロエフェクトや、定番のラジオボイスやショートディレイやダブリングなど、自分で足元などでエフェクト具合をコントロールできて気軽にかけられます。
当然これがメリット1つ目です。メリットというか目的ですね。
そして2つ目のメリットは足元でON·OFFの切り替えができるエフェクターならば自分のタイミングでエフェクトをかけられるということです。
現在のようにまだ市場で手軽にボーカルエフェクターが手に入らなかった時は、PAでボーカルへエフェクトをかけることがほとんどでした。
そうなると曲のある一部分でエフェクトをかけたい場合は、事前にPAさんへ音資料と歌詞カードを送り曲を覚えてもらい、その部分だけPAさんがエフェクトをかけるといった流れになります。これまでの方法だとリハーサルでの1,2回の練習で本番を迎えることになり思ったようにエフェクトのタイミングが決まらなかったり、また、ライブハウスにかけたいエフェクトがないかもしれないといったことがあるので、その点において自分のエフェクターだと毎回同じエフェクトの音色にでき、かつ好きなタイミングでエフェクトをかけられるのがメリットです。

たしかにメリットはあるのですがメリットだけではないということを理解して使ってほしいというのがPAの共通の思いであると思います。
ですので次はデメリットを説明していきます。

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ボーカルエフェクターを使うデメリット

ボーカルエフェクターを持ち込み、マイクから直列で繋ぐ場合のデメリットはこれにつきます。
音質が悪くなるという点です。
悪くなると書きましたが、エフェクターの種類によって特性は変わり、単純に音の質が悪い物もありますし、歪ませるものであれば特定の周波数にピークが発生したりし、マイクでそのまま歌う状態がピュアな音に対してエフェクターをかけることにより変化や劣化が生じることになるのです。
エフェクターなんだから当たり前じゃないかと思うかもしれませんがこれがくせ者なんです。
音が変化することによって何が起きるかというとハウりやすくなります
PAはマイクの特色や壁の反射などの様々な条件下で極力ハウらないようにチューニングをしています。
チューニングを大げさにやり過ぎれば、必要である音の周波数もカットしてしまうことになりモニターに返しても聞こえ辛かったり、客席向けの音も抜けが悪くなったりしてしまうので、モニターやメインスピーカーではシッカリハッキリ聞こえるようにかつハウらないピッタリの状態をチューニングの作業で作っています。
そのピッタリである状態の上にボーカルエフェクターの歪み成分だったり劣化している音質が乗るとその均衡は崩れハウリングが起きるのです。
その崩れた部分を新たにチューニングし直すことも可能ですが、限られたリハーサル時間を使うという問題もありますし、追加でハウリングを起こす周波数をカットするとモニターとして聞きたい部分をカットせざるを得ない状況も起こります。
すなわち、モニターにたくさん返したくてもハウってしまうから返せない、一生懸命返しても聞きごたえのない音になってしまうのです。
これが最大のデメリットとなります。

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有名なアーティストだってやってるけど、どうやってるわけ?

たしかに有名なアーティストもエフェクトは使っています。
有名アーティストがどうやっているのかというカラクリは専属PAとイヤモニという要素が絡んできます。
専属でそのアーティストを毎回やっているPAのエンジニアさんであればこの曲でエフェクトをかけるこのタイミングでかけるというのを阿吽の呼吸でやります。つまり、自分でタイミングを合わせてエフェクトをON·OFFしなくても勝手にやってくれます。
そして、エフェクトをPA卓で付け加えることで、お客さんにはエフェクト有りの音を、モニターにはエフェクトOFFの状態の音を返せるのです。エフェクトOFFのモニターであればハウリングの心配はないでしょう。(厳密には外音の回り込みがありますが)
モニターはガッツリ聞こえて外音はエフェクトがかかってるという状態が作れます。
これが1つ。

もう1つはイヤモニです。
イヤモニは耳に装着するモニターです。イヤホンタイプなのでモニターの音をマイクで拾うことがありません。
なのでエフェクトがかかった通常フットモニター(コロガシ)だとハウっちゃうような音質のエフェクトでもその音をマイクが拾わずフィードバックのループをしないのでハウらないで済みます。
こんなカラクリがありました。

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じゃあイヤモニ使えばいいの?

では有名アーティストのようにイヤモニを使えばエフェクターもかけられるしモニターも聞けるじゃんとお思いのあなたちょっと待ってください。
これは書き始めると長くなるので改めて解説したいのですが、イヤモニにもこれまた注意事項がたっっっくさんあります。

こちらに詳しく書きました!

とっても便利!カッコイイ!もうコロガシ不要!ライブでイヤモニ/IEMを使ってみよう!
イヤモニって耳につけてるやつ?あれ好きなアーティストも使ってて写真で見たことある!カッコイイ! イヤモニってモニター聞きやすくなるんだよね!?よくわからないけど良く聞こえるなら使...

それを理解するまでは「買えるから」「便利って聞いたから」という理由だけで使うのはいったん待ってほしいと私は思っています。
個人的な見解としてはイヤモニ、特にワイヤレスのイヤモニは専属PAがつくようになってから使用し始めるのが良いと思っています。

では、PAにエフェクトかけてもらえばモニターは生音で外音だけエフェクトをかけてもらえば解決するんじゃん?ってところを次に解説します。

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こんな場合ならPAに頼もう

先程の説明の通りPAに頼めばモニターは素のマイクの音、お客さんにはエフェクトのかかった音というのが可能です。
ですが、最初のメリットのところで書いたようにON·OFFのキメが多すぎたりタイミングがシビアだったり、珍しい変わったエフェクトであれば持ち込みに頼るしかないでしょう。
しかし、リバーブだったりディレイだったりスタンダードで必ず常設されているエフェクトであればPAに頼むのが良いでしょう。
難しいキメでなければ対応できますし、質感の要望にも応えられるはずです。
一曲だけかけっぱなしだったり、ボーカルには常にショートディレイやダブルエフェクトなどであればリハーサル時に確認して頼む方が良い結果になると思います。

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理解して使うならアリ

ボーカルエフェクターのメリットとデメリットを理解してもらえたでしょうか?
たしかにエフェクターはインパクトを与えられますしライブでとても効果的な演出を作ることができます。
しかし、持ち込みをする場合、特にマイクから直接繋ぐ場合は注意すべきことと、デメリットを納得して使ってもらいたいと思います。
エフェクトをいっぱいかけて、さらにモニターもいっぱい返してというのは、スイーツいっぱい食べたいけどもっと痩せたい論と同じです。
今では簡単に導入できる環境なので、その特徴をわかった上で使うのはアリアリだと思います。酸いも甘いも踏まえてライブに望んでもらいたいと思います!

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