リハーサルでの単音チェックはどうしたらいいの?PAはこんなことをしています。

ライブの為に

一個ずつ音をチェックしてるのってフェスとかで見たことある!あれって何やってるんだろう!

いつもリハであれやってるとき待たされて暇なんだよ。

今回は少し上級編です。というのも、これはPAの作業でアーティストは理解していなくても問題のないことだと思います。アーティストは演奏に全力を注いでいただければ良いのですが、もし一歩先へ進みたいのであれば知っていて損は無い内容です。

とある日、PA同士で私がドラムを叩き、もうひとりのPAが音を取るという作業をしていました。
お互いPAなので今オペレーターはどういう作業をしているか、作っている音を聞けば手に取るようにわかりました。なので、今チェックしている音を確認しやすいように私は叩きました。その時オペレーターをしていたPAが「やっている作業に合った叩き方をしてくれたから早く終わった」と言っていました。
PA同士だからこういうことが成り立ったのはもちろんですが、もしリハーサルでバンドともこの次元まで意思が共有できていたら時間は短縮できるとともに納得のいくサウンドになるはずです。
専属でPAがいるバンドなんかはこのあたりまで共有できていることもあると思います。

そこまで気がまわらなくても全然いいのですが、頭の片隅に覚えているだけでレベルアップできると思います。

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ドラムのサウンドチェックは何をしてる?

まず、リハーサルの順番でも一番最初に音をもらうドラムです。
ドラムは一つ一つのタイコにマイクを立てますし、ハイハットやシンバル類もありますし、処理をする作業も多く一番時間のかかるパートです。しかし、ドラムさえバッチリ決まっちゃえばこっちのもんだと、もれなくPAみんなが思っているはずです。

キック編

流れは人によって違ったりすることもありますが、まずキック(バスドラム)から音を取っていくでしょう。
バスドラムにはマイクを2つ仕込んでいることが多いです。
バスドラムの太鼓の胴鳴り、ドーンとした迫力のある音を取っているキックのアウトと言われるマイクと、バチッとしたアタック音を取っているシェルの中に仕込んだキックのインと呼ばれるマイクの2つです。
音の作り方はPAによって様々で、特にバスドラムなんて本当にバラバラで、だからこそ腕の見せ所でもあるのですが、とりあえずオーソドックスな作業工程を紹介します。

アウトのマイクはまず音のレベルをちょうど良い大きさで聞こえるように合わせます。そして音の余韻が長すぎないよう丁度良い余韻を作ります。そしてモワモワとかキンキンとか不要な音があれば処理をしたり、またかっこよく聞こえるよう強調したりします。

インのマイクも同様の作業をします。しかし、アウトのマイクよりもインのマイクはアタックが強調された音作りをされることが多いので、バチッとした音を強調したり、踏む力が安定しないドラマーには音のバラつきがでないような処理をすることもあります。

そしてインとアウトのマイクを別々で作ったらそれを混ぜてみてどう聞こえるかを調整していきます。それぞれで大げさに作りすぎていたら少しマイルドにしたり、逆のパターンもあります。位相といって2つのマイクがガッチリ音が噛み合うようする作業もします。(位相について知りたい方は各々で)

ここまでの作業でやっとバスドラムが終了です。これをだいたい1~2分くらいで頑張っています。

スネア編

続いてスネアです。これもリズムを司る重要な役割ですね。
こちらもマイクは2本立てることが多いです。
スネアではマイクの呼び方をトップボトムといいます。上側のヘッドに立てるのをトップ、裏側のスナッピーを狙っているのがボトムです。
マイクが狙っている通り、トップは打面でメインとなるスネアの音です。ボトムは裏に貼られているスナッピーという響き線をとっていてシャララーっという音を取っています。
ですので、作業としては、まずトップのマイクのレベルを取り不必要な低音をカットしたり、嫌な倍音があれば処理をしたり、音が籠もったりしていれば音抜け良く聞こえる処理をし、バスドラムと同様、いらない余韻があったら処理をしたり、叩きムラが気にならないような処理をします。
ボトム側はスナッピーの比較的高音域をとっているので同じく不必要な低音をカットしたり余韻やムラや耳障り良いサウンド処理をします。
そしてまた2つのマイクの処理が完了したら、合わせて音を出してバランスを聞き、位相の確認をしてさらにリバーブをかけたりします。

スネアもこれらの作業を1分くらいで頑張ります。

ハイハット編

これもリズムの重要な役割を担うハイハット。
ハイハットなど金物類は太鼓よりも処理工程は少ないです。
口径の小さいハイハットは太鼓類のように余韻を気にする必要も無いですしクローズで叩くことも多いので叩きムラも出にくいし気になりにくいです。
ですのでハイハットは金物の高音域を取りたいので低音域をカットします。カットしないと必要の無い低音が入ってしまい音がどんどん濁ります。他に耳障りな高音などが無いか聞き、あれば処理をします。あとは軽くPANを振り定位を決めるくらいでしょう。

これは30秒くらいで終わります。

タム編

こちらもやはり太鼓ですのでバスドラムのような処理が必要になってきます。
同じくまずレベルを取ります。続いて余韻を決めます。余計な低音をカットしたり、アタックを少し強調してメリハリをつけるなどの処理をしていきます。リバーブが必要ならかけます。
これを、フロアタム、ロータム、ハイタムと3つやります。3つとも音が作れたらロールで叩いてもらい音量のバラつきや音程のバラつきがないかを確認します。修正があれば修正をしてなければPANを振って定位を決めます。タムの量が増えれば同じだけやります。

これもタム1つにつき30秒~1分くらいで終わらせます。

シンバル編

やっと太鼓類が終わり、最後にシンバルです。
こちらもハイハットと同様、不必要な低音域のカットと耳障りになるところを処理します。
右手側と左手側のシンバルやライドのカップなど違和感なく聞こえるようなマイクの置き位置が重要になります。

これも左右合わせて30秒程度で頑張らせて頂いております。

全体編

これで晴れてすべてのドラムの音がとり終えました。
やっとドラムセット全体で音を出して各太鼓とシンバルのバランスをとって終了です。

全部で5分前後でしょうか。なるべく曲での音合わせの時間を作るため必死で最良の音を最速で作っているわけです。

こういった処理作業をしているので、じゃあどういう風に叩いてくれたら嬉しいかというのは最後にまとめて書きたいと思います。

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ベースのサウンドチェックは何をしてる?

ベースはDIを使いラインでの収音とマイクをアンプに立てて収音する2つを使います。
こちらもバスドラムのインとアウトのマイクと同様にPAによりラインとマイクの使い方は違うこともありますが、オーソドックスな説明をしていきたいと思います。
まず、どちらが先でもいいですがラインとマイクのレベルを取ります。
どちらも聴感で同じくらいに聞こえるようにレベルを取る時もあれば、どちらかをメインの音にしてもう片方を補う程度にすることもあります。それは人によるし、バンドによるし、サウンドによるし会場によります。
レベルが取れたら、ベースのラインにはコンプレッサーをかけることが多いはずです。スラップ奏法などをした時にアンプでの聴感以上にラインには瞬間的に大きな入力があったりします。その時にバキッと想定以上の過大な出力を抑えるために調整を行います。ですので、よくリハーサルで「スラップありますか?」と聞くんですね。

他にライン、マイクと共に低音が出すぎていないか埋もれすぎていないかなどを聞きながらEQなどで整えていきます。
マイクとライン同時に音を出して違和感なく馴染みコントロールしやすいようにバランスが取れればあとは曲中に使う音色を確認して音量が大きくなりすぎるエフェクトはないかを確認できれば終わりです。

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ギターのサウンドチェックは何をしてる?

ギターのサウンドチェックは他のパートに比べるとシンプルです。
ライブハウスでしたら通常はアンプ一つに対してマイクは一本かと思います。ワンマンなど時間が取れる時は違うマイクを2本立てて音を混ぜるのも良いので事前にお願いしてもいいと思います。

ギターはそのままアンプで鳴っている音を再現することだけでしょう。
ダイナミクス的な処理よりもEQでの音質を整える方がメインとなります。耳に痛い部分があればそれを処理したり不要な低音を処理したりなどです。
しかし、ライブハウスにおいてギターとベースに関しては出力が大きすぎることへの影響が中音のみならず客席向けの外音にも出るので処理しきれないものに関してはアーティストとPAが話し合って音作りをしていくことの方が重要と考えています。
詳しくはこちらの記事にも書いています↓

ライブでの各楽器やボーカルの音量バランスの考え方!お互いを尊重しないとバランスは崩壊します!
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キーボードのサウンドチェックは何をしてる?

キーボードはラインのみの収音となるのでレベルの上下がどれくらいあるかを慎重に確認します。
音色ごとにアウトプットレベルの数値がバラバラだと音を変えた途端に爆音が出る可能性を秘めています。ギターなんかのエフェクターでもつまみが最大に振り切りになっていきなりONにしたら同様のことが起こりますが、マルチエフェクターなどで無い限りはつまみで確認できますが、キーボードで内部で切り替えとなると切り替えて弾いた瞬間に気づくということが起こってしまいます。
モニターに返してからだと全員が驚いてしまいますしスピーカーも故障する可能性もあります。
ですので使用する音色を確認してレベルのバラつきがないかをチェックします。

ドラムのように叩いて楽器から音が出るわけでなく、ギターやベースのようにアンプから音が出るわけでもないキーボードはPAから音を返さなければ無音になってしまいますので、予めモニターに返しておきます。モニターを返さないと音が確認できない楽器に関してはここまでがサウンドチェックの工程になります。

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ボーカルのサウンドチェックは何をしてる?

ボーカルはボーカリストの声質や発声方法や音楽のジャンルやマイクの種類など様々な要因を加味し、しっかりとお客さんに届けられるようなサウンドにしていきます。

まずレベルを取るところは同じです。しかし、他の楽器と違い人間から出ている音を収音しているのであまりに長い時間歌わせてしまうと疲れちゃいますよね、ですのでマイクに入力された声がどんな音かすぐに聞き取り素早くEQやコンプレッサーの処理を終わらせるよう心がけています。
ボーカルもキーボードと同様、どんだけ叫んでもステージ上での生音は蚊の鳴くような音に過ぎないので予めモニターに返しておきます。

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こうしてくれるとPAは助かる!

ここまででバンドでのサウンドチェックの流れが一通りわかっていただけたと思います。
この全行程を急いで急いで5分~10分くらいで行っています。
この5分~10分というのを毎回5分にできたら理想ですよね?その分、曲で合わせる時間が増えるということですから。
もちろんPAの進行の力量なんですが、サウンドチェックでこうしてくれたらPAはやりやすいというのを理解してくれたらサクサク進められるかもしれません。

ドラムなら、いきなりドコドコ叩いてしまうと、ドラムの項目で書いた[余韻の処理]ができません。
ハイハットもずっとオープンのまま叩いていたらクローズの音を確認したくてもできません。
「ゆっくり叩いてくださーい」「クローズもお願いしまーす」とやりとりをすればいいですがその積み重ねが5分になるんですよね。
ですので、ドラムなら
太鼓類は余韻が消えたら叩くというペースがいいです。その中でたまに連打を挟むとそちらも確認できるので好ましいです。外音を注意して聞いていると今、余韻の処理をしているなというのもわかるので理解できていると楽しいですよ。
シンバル類は実際に曲で使うテンション感とフレーズで叩くのが良いと思います。
ライドのカップだったりスプラッシュだったりチャイナだったりハイハットのオープン・クローズだったりリアルなフレーズでチェックするのが一番です。

ベースならできるだけ低音からハイフレットまでの音でベーシックな音を鳴らしてくれたらわかりやすいです。
そのあとに曲で使う音色だったり、ピック弾きやスラップがあれば「○○の弾き方(エフェクト)あるのでやりまーす」とどんどん弾いていってもらえればとてもスムーズに進行できます。

ギターはまず最初にリードギターかサイドギターか役割が別れていたら教えてもらえると助かります。
その上でバッキングとリードとそれぞれの音をもらったりエフェクト音を確認していきます。
エフェクトの音色の種類が多い場合はソロで音が大きく上がるものや、大きく歪むもの、あとはキツめのエフェクトがかかるワーミーやリングモジュレーターなどそういったものだけ確認できれば大丈夫です。
どんな音色があるのかはこちらはすべてわかるわけではないので、メインの歪みだったりブーストだったり教えてもらえると助かります。

キーボードは一番最初にメインアウトのボリュームがどれくらいになっているか教えてもらえると助かります。キーボード側がとても小さくなっていてPAで一生懸命上げてあると、キーボード側でもし急に上げたら大音量が流れてしまいます。どれくらいのボリュームでPAに送っているか把握できると捗ります。

ボーカルは単音で一人で大声出すの恥ずかしいかもしれませんが本気でやってくれたらありがたいです。本番と違うと音作りが役にたたないんです。本番が始まってから調整するというのはお客さんにそれを聞かせているということです。いいライブの為に全力でお願いします!

今回は知らなくてもいいけど知ってたらよりいいサウンドチェックの話しでした。
PAとアーティスト、お互いがどうしたら理想的か理解し合ってリハーサルから準備をしていけるとライブがより良いものになっていくと思います。

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