こちらのコラムに続いて二回目。

あくまで私の私感、というか私の音楽の好みの話になりますので気に触ってもこんなやつもいるかくらいでお願いしますね。今テーマはPAエンジニアの総意である!みたいな話ではないですので。
テーマはタイトルの通り、昨今、特にメジャーになるほど普及率も高い同期音源を用いたバンドライブについて個人的に思うところがあるので書いていきます。
ライブで使う同期音源?なにそれ?
まず同期音源ってなんぞやっていうところから。
ライブが好きで何度も観て聴いていてもその存在に気づいていないこともあるかもしれません。
同期音源というのはPCやシーケンサーやサンプラーやMTRなどの音源を流す機材を使ってバンドメンバーの楽器以外の音を流すんですね。
その音源は時にハモリのオケだったり、時にメンバーには1人しかいないギターを音源で更に足してアンサンブルを作ったり、メンバーにいないバイオリンやハープなど綺麗なウワモノを加えたりなんでも可能です。
同期音源を使えばバンドサウンドだけでは少し物足りない音の隙間を埋めて分厚いサウンドになったり、綺麗なハモリができたり、ゴールデンボンバーみたいに楽器弾かないでシャンプーしたりもできちゃう。
ライブではすごく自然に同期音源が流れていてお客さんには気づかないかもしれません。
メンバーにそんな担当楽器がいないのに大げさにピコピコ流れてたらすぐにわかるかもしれませんが、サビで少しだけコーラスが入るとかキメのリフだけでギターが入るとか、キメでバスドラムの低音だけちょっと増してるとかだと気づかないはずです。
そんな同期音源、今ではメジャーな現場では必ずと言っていいくらい登場する素晴らしいアイテムなんですよ。
素晴らしいのに何が違和感だ!裏方が調子のんな!
すいません。けど、今回はPAとしてではなく一音楽ファンとしての意見でありんす。
そう、素晴らしいから使われていてそれをみんなが良いと思うからなんですよね。
ライブでもCDの音源と同じようにオーケストラのサポートメンバー全員を呼ぶなんて予算が出ないよ!全員をメンバーにしてたら大所帯になっちゃうよ!という理由ももちろんあります。
しかし、私はバンドはその持ってる楽器で勝負してくれって思うんですよ。
音源を再現したいならその楽器を演奏するメンバーと一緒にライブしてくれって思うわけなんですよ。
楽器と楽器が絡み合って音楽が鳴るそれをライブでは見たいんですよ。
ミスってもズレても曲が止まってもいいと思うんです。それが生でライブするってことじゃないかと。
その日、その瞬間しか見ることができないからライブは楽しいんですよ。
あ、すいません熱くなっちゃいました。
このあと詳しく説明します。
バンドの魅力って生で音楽を演奏することじゃない?
何も音のない無音から楽器だけで音楽を発生させられるのがバンドだと思うんですよ。
もちろんアイドルとかでオケを出して歌うのは全然オッケー!バンドじゃないですから。
だけどバンドがオケに頼ったらもう片腕落ちてる気がしちゃうんですよね。
同期音源あるならもういっそのことそのギターとベースとドラムもパソコンの中入れちゃえば?そっちのほうがミスもしないし走らないしモタらないよ?って。極論ですが。
走ったりモタったりもライブの魅力なのに。
あそこでギターがトチったけど上手く他のメンバーがカバーしたなーとか、初めての大きい会場だから一曲目ドラム緊張して超走りまくってるーとか、最高じゃないっすか?
前回のイヤモニの記事に書きましたが↓

同期音源があると同期のテンポに合わせて演奏するんですよ。
機械にテンポを支配されてる人間。機械のクリックに合わせて演奏するライブ。
悲しい。これを次に書きます。涙
いつ見ても同じライブって魅力ある?
上に書いた通り同期音源があると同期音源に縛られるんですよ。
同期音源は機械が録音された通りに再生することしかできません。
バンドメンバーのようにテンポを合わせて調整したり、テンション上がって盛り上がったから強くギターを弾いたり強くドラムを叩いたり、ブチ上がってスラップしたりそんなライブのカッコイイ演出はマシーンはしません。同期音源は機械なので録音されたまま淡々と再生されるだけです。
お客さんと、バンドメンバーとその瞬間の熱量が反映されるからライブは楽しいんです。
同期音源はそれを阻害します。
テンポは機械に支配されます。
いつどのライブも同じリズムとテンポ。
「お客さんが盛り上がってるからコールアンドレスポンスもう1回ししちゃうぞー!」
できません。同期音源は間奏終わってサビいっちゃうので。
LIVEって“生”ってことじゃないですか。なんか生感薄く感じちゃうんですよ。
たしかに、たしかに、ドームやアリーナで何万人も入れてコンサートするなら迫力やクオリティは求められますよ。それは存じております。
しかし、しかし、ドームやアリーナクラスじゃなくてライブハウスクラスでもどんどん機械縛られ人間が増えていることに不安を覚えるんです。
同期音源のトラブルはかっこ悪い
この項目だけはPA目線で解説します。
同期音源ってPCで再生することも多いです。
PCってよくトラブりませんか?

この記事で詳しく書いてますが、PCって急に固まったりとかソフトが立ち上がらないとかあるじゃないですか。
それがライブ中に起きると考えると怖くないですか?
ライブにはマニピュレーターが必ず帯同して同期音源は担当者がコントロールする、その規模のバンドなら心配いらないでしょうがバンドみんなが同じでしょうか?
ライブ中、突然異音を出す同期音源。演奏中処理落ちして一拍ズレる同期音源。ブレイクなのに無音のところに音が流れちゃう同期音源。機材が壊れて同期がないとスッカスカになっちゃうバンド。
とにかく同期に関するトラブルが起こるとただかっこ悪いんですよね。
ギターやベースにトラブルがあって音が出なくて慌てて直しても復帰したら
バンドマン「待たせたなー!!」
オーディエンス「うぉぉぉぉーー!!」
で済むじゃないですか。トラブった&ミスったトークのMCとか楽しいじゃないですか。
それがライブなんすよ。
知ってます?Mステのt.A.T.uドタキャン事件
~時は2003年~
今のティーンは知らないであろう、当時一世を風靡したロシア発のt.A.T.uという女性ボーカルユニットが来日してあのミュージックステーションに出演したのである。
オープニングのあのいつもの階段を颯爽と降りるt.A.T.u。
あのサングラスのMCの方とのオープニングトーク。
「ついにあのt.A.T.uが生放送で見れるのか」全国のt.A.T.uファンは固唾を飲んでテレビに張り付いていました。
しかし…
突然t.A.T.uがスタジオから姿を消します。
焦るスタッフ、焦るタモさん。
タモさんの口からt.A.T.uはドタキャンしたことが告げられます。悲しむ全国のt.A.T.uファン。
生放送でポッカリとt.A.T.uが演奏する時間の枠が空いてしまった…その現場を救ったのはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTでした。
THEE MICHELLE GUN ELEPHANTはロックバンドです。同期音源を使わない正真正銘のロックバンドであります。
この日出ていた他のアーティストはアイドルやラップユニットなど、音源がないとライブができないアーティスト。
しかしTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTは違います。マイクと楽器があれば音楽を奏でられるのです。
本来番組でやる曲でなくても、リハーサルをしていなくても演奏できます。楽器があれば何十曲だってできます。
THEE MICHELLE GUN ELEPHANTはt.A.T.uがドタキャンして空いてしまった時間におかわりでもう一曲ライブをしたのです。もちろん予定していたわけではないので歌詞のテロップなんかも出ないしカメラなどのリハもしていません。けれどそれこそがLIVE、生だったのです。
それを見ていた私は
「これがバンドや!ミッシェルや!」
と叫びました。
もしミッシェルが同期音源を使っていたらどうでしょう。他の曲の音源を持ってきてなかったらアイドル達と同じくドタキャンt.A.T.uに苦笑いしかできなかったかもしれません。
バンドってこういうことなんだなってこの時私は思ったんです。
同期を否定して考え方が古いだけかもしれませんが、バンドの本質的なカッコよさを知った1つの出来事でした。
ここまで愚痴を聞いてくれてありがとうございます!
長々と愚痴みたいになっちゃってすいません。
ここまで見てくれた人は、同期使って自信を持ってやっているのにボロクソ書かれてブチ切れてる人か、うんうんわかるわかるって人でしょうか。
別にこの価値観を押し付けたいわけでもなく、使いたければ使えばいいし、けどこんなリスナーもいるよってことだけです。
同期音源まみれでもそれを逆手に取るゴールデンボンバーみたいなのは好きですし。
同期音源まみれでも凄まじすぎるほどのグッドメロディなら全然アリかもしれません。
もうこのブログの隠れテーマになりつつありますが、流行ってる、カッコイイから、あの人がやっているからが優先になって音楽の中身の良さをないがしろにしないでもらいたいというのが今回も伝えたいことだったのかもしれません。
バンドマンは純粋に音楽を追求してほしいと思っています。
コメント
初めまして。
私はバンドで同期音源を使って演奏をしています。
正直、同期演奏は良いことばかりだと思っていたので最初この記事のタイトルを見て嫌な気持ちになりました。
しかし内容を読んでハッとしました。本当にバンドは生演奏をしてなんぼです。すぐには生演奏だけでライブはできないかもしれませんが、少しずつ生演奏だけでできるように工夫していこうと思いました。ありがとうございました。
コメントありがとうございます。
確かに見てもらいたいが故にこんなタイトルにしてしまいました。不快な思いをされていたら申し訳ありません。
しかし、本文にもあります通り決して同期を否定しているわけではないのです。
今では同期が当たり前に使われるようになったわけですが、当たり前世代に使わないことのメリットも知ってもらいたいという意図になっております。
どちらのメリットもデメリットも知った上で天秤にかけた後に使うことは音楽をやる上で大変素晴らしいことだと思います。
ktさんのこれからの音楽活動のお役に立てていたなら幸いです!
こんばんは!
昔ライブに通い、結婚して子育て中は離れていて、子育て一段落し、娘も音楽に興味を持つようになり、一緒にライブに通いだし10年程経ちました。
今では普通に慣れた同期も久々のライブではすっごい違和感で、え?演奏って録音?って思ったほどで。
久々に昔の音源を聴いて、やっぱ昔の同期なんか使ってない頃の演奏の方がかっこいい!って。で、同期っていつ頃から使いだしたんだろう?って検索したらこちらに辿り着きました。
もう子育ての10数年のうちに同期だけでなく、ライブを取り巻く環境が全て変わっていて。もうカルチャーショックだらけでした。
昔の15年程ではそんなに変わったことはなかった気がするのにこの10数年でこんなに変わるんだって。番号通りに入って前の方に割り込み厳禁とか…バンドとファンの距離感とか。SNSの普及のせいでしょうか…
話が逸れてしまいましたすみません。
結論、同期を否定はしませんが、やっぱり昔の同期無しの方が絶対かっこいいし好き!
こちらのコラムを読んで、そうそう!分かる!ってついコメントしてしまいました。長々と失礼しました。
あきさんコメントありがとうございます。
私と同じ感覚かもしれませんね。
それと同時におそらく私と同年代だと思うのですが、やはり自分の青春の頃の思い出というのはすごくキラキラしていて、イマドキのトレンドはなんだか理解し難い、そんなところもあるのかもしれません。それが歳をとるということかもとも思ってしまいました。勝手に巻き込んでしまってすいません…
しかし、同期のない、体一つで勝負!というスタイルは今は流行っていないかもしれませんが私は好きです!
この魅力がまた若い世代にも伝わるといいなーと老婆心のように思っています。
ちょーわかる。
打ち込みで曲作るのもそれを作品として発表するのも別にいいけどLIVEに行ってるのに同期演奏聞かされるのは違うよなって。正直個人的には詐欺だよなってくらいに思ってますww
紅白も安全地帯やSuperflyなどなど、バックをちゃんと用意してるアーティストは音楽に対してとても誠実に感じました。勿論同期演奏込みで素晴らしい演奏をなさる方も沢山いらっしゃいましたけど、どちらかというとライブってよりはパフォーマンス。耳で聞くのではなく目で見るだけの時代なんですかねぇ。
匿名さまコメントありがとうございます。
ご理解いただけて嬉しいですが、同じように思っていただける方は音楽にある程度詳しい方ですよね。
私もこの記事を書いておいてアレですが、、
匿名さまと同じように紅白を見て同じことを思っていたのですが、父にこのバンドは当て振りでこのバンドは生演奏で、このバンドは同期があってと解説をしていたのですが、家族は「よくわからない」というより「どうでもいい」といった雰囲気でした。
なのでいわゆる世間一般からするとどっちでもいい内容なんだなと思いました。
音楽に詳しかったりLOVERな皆さんは好き嫌い分かれる話なのかなと思っています。
一番伝えたいのはプレーヤー、ミュージシャン、バンドマンへ、です。
メリットだけじゃないんだぜーって言うのがわかってもらえればそれ以上は何も言いませんが、コメントにある通り共感されるバンドLOVERSもいるよってことは知ってもらいたいですね。