リハーサルって何すればいいかイマイチわかんないよな。テキトーに曲やってモニターもらって終わりって感じ?
こういった方も多いのではないでしょうか。リハーサルがどんな目的で進行しているか、効率良く進めるにはどうしたらいいか、限られた時間でリハーサルをしっかりと行い、本番を万端で迎えられるようにしましょう。
今回はリハーサルで行われていることを細かく解説したいと思います。
PAが音作りをしたい場面、バンドがモニターバランスを決めたい場面、そこがごちゃごちゃになりお互いの要望をぶつけ合っては時間も無駄になってしまいますし、進行もスムーズにいきません。
良い本番を迎える為、お互いがリハーサルとはなんぞやということを理解し合って進められることが理想だと思っています。
スタンダードな説明にしようと心がけていますが、PAの方によって多少の段取りの違いはあるかもしれませんのでそこは臨機応変に現地の方とコミュニケーションをとって行ってください。
あくまで対バン形式でライブ出演の際のリハーサルでの説明となります。各バンドのリハーサル持ち時間30分(転換込み)といった一般的なライブハウス等でのリハーサルのお話です。
ワンマンなど時間をかけられる日には通しリハなどする場合もありますし、プロのミュージシャンはリハーサルでのセットも各テクニシャンがやったり時間もたっぷりあったりしますのでそういったリハーサルはまた違う動きとなります。
リハーサル三か条
まずリハーサル三か条を置いておきます。
これはリハーサル云々抜きにして人として何をするにしても守ってもらいたいことですが、これができていない人が多すぎるので肝に銘じて下さいませ。
- リハーサルで練習しない
- 時間を守る
- 前後のバンドに迷惑をかけない
その1【リハーサルで練習しない】ですが、意外と多い。
練習は練習スタジオでしてきて下さい。リハーサルでは音や照明や演出の確認をするための時間です。やるならテキパキとリハやって時間余ったらね。
その2【時間を守る】ですが、こんなこと説明させないでって思いです。
モニターがなかなか決まらないとか、機材トラブルとか仕方のないことにはこちらもなんとか時間がオーバーしても対応したいと頑張ります。だけど、リハ時間にメンバーの誰かが間に合わないとかは問題外です。リハ終了10分前に「すいませーん遅れましたー昨日飲みすぎちゃって(笑)」とか言いながら準備しだす人とかいますからね。
経験論ですが、かっこいいバンドほどこんなことは無いということだけ言っておきます。
その3【前後のバンドに迷惑をかけない】これも当然ですね。
リハが終わって他のメンバーも片付け終わって、次のバンドがステージに入ろうとしてるのに、のんびりエフェクターを箱にしまってる人。「ナマケモノの食事風景かい!」という例えツッコミをグッと飲み込み「しまうのはステージの下でお願いします」と言います。周りを見て状況をつかみ対応できる人になって下さい。
たぶんそんな難しいことではないはずですが、できない人が多いのには困ります。リハをやりたいのに小学校の道徳の授業しなきゃいけないの?と思う時あります。正直。喝です。
物事にとらわれないのもロックだ、とかなら制作・ステージディレクター・音響・照明・舞台・特攻・映像などスタッフ陣をあなたが食べさせるくらいになれば、そんなわがままもなんでもいいライブの為だと聞いてくれますので、その座を狙うのもいいかと思います。
当日のリハーサルの手順
それでは三か条を肝に銘じつつ、本題のリハーサルの手順を紹介します。
大まかにだいたいこんな流れで進行していくこととなります。
- セット図、セットリストをリハ前に記入しスタッフに渡す
- すぐにリハーサルが行えるように準備
- リハーサルの順番がきたらセットを開始
- セットができたら準備完了を伝える
- リハーサル開始~単音チェック
- バンド全体で曲で合わせてモニターバランスを決める
- 中音が決まったら外音や照明などの要望を伝える
- SEなどきっかけがあるものの確認
- その他の確認が終わればリハーサル終了
- アンプのセッティングなどをメモリーして速やかに片付ける
この流れの詳細を説明していきます。
1、セット図、セットリストをリハ前に記入しスタッフに渡す
まずセッティングを書く紙とセットリストを書く紙がチケットリストと共にライブハウス側で用意してあると思いますのでそれを記入します。チケットリストはオープン前までに書きましょう。
事前にセッティング図の資料は送ってあればそちらを参照してもらってもいいですし、簡易的に記載するのでもいいでしょう。
事前に送る際のステージプロットの書き方はこちらを参考ください。
例えば前日の練習の時に機材が壊れて変更があるなどあれば当日のセット図に記入するなど書いておくといいです。
続いてセットリストですが、まず登場から曲数と曲の時間とMCを含めて演奏持ち時間に収まっているかどうかを確認してください。
そしてセット図にはSE[あり・なし]や曲のテンポや音響や照明への要望、録音するかなどの記載箇所があると思うのでそちらも記入してくださいね。
某ライブハウスはライブハウススタッフからの応援[あり・なし]野次の[あり・なし]まで選べたりします。
2、すぐにリハーサルが行えるように準備
リハーサルの転換が始まったらすぐに自分のバンドの用意ができるように準備をしておきます。
ギタリストやベーシストならギターを出してチューニングを済ますなり、弦を替えるなら伸ばしておくなり、エフェクターボードの蓋を開けて予めつまみのコントロールを大まかにでもセットしておき、電源とシールドを繋げばすぐに音が出るくらいまで準備しておきましょう。
ドラマーでスタンド類やシンバルやスネアを持ってきているならすぐ置いて使えるようにセットしておきましょう。ただ、スネアなどのチューニングは他のバンドのリハーサル中は控えるのがベターです。リハーサル場所に影響の無い楽屋など迷惑にならないような場所でやりましょう。
というように、各々準備を済ませておけば前のバンドがリハーサルを終わったらすぐに転換をすることができます。
出勤前、家出る時に「あ、いっけねー!まだパジャマじゃん!」って人いないでしょ、同じことです。
ボーカルなど準備があまり必要ない、または早く終るメンバーが①のセットリストやセット図の記入をするのが良いのではないでしょうか。
3、リハーサルの順番がきたらセットを開始
では、前のバンドのリハが終わりました。
「三か条でも時間守れって言ってたし、早く準備すればリハの時間増えるし速攻でエフェクターボード置こーっと!」
これ実は困るんです。
テキパキと急いで準備をするのはとても良い心がけなんですが…
転換には順番があります。アンプの移動がない場合は良いのですが、アンプの移動やPAのケーブルの移動があった場合、先に次のバンドのメンバーが入ってしまったり大きなエフェクターボードが置かれてしまうとアンプの移動ができなくなってしまいます。
こんな状態です。
ギターアンプを動かしたいのに次のバンドのエフェクターボードが置かれ移動できなくなってしまっているという図です。
わざわざ図まで描いて何が言いたいのかというと、楽器類のセッティングの前にまずアンプの移動をさせて下さいというPAからのお願いです。これは本番での転換時も同様です。
アンプの移動ができずにまたボードを移動してという二度手間が発生すると結局は時間がかかってしまうんです。段取りとして、こちらを先に行えばスムーズに行き結果的に時間短縮になるよということです。
たぶん急いで準備しようとしてもスタッフから「ちょっとアンプ移動するまで待っててください」とか言われると思います。その時間が勿体なければアンプ移動を遮らないところで、持ち込みのマイクをつけるとか、竿物だけステージの端に置くなどしましょう。
アンプの移動さえ終わってしまえば準備を進めてください。
PAサイドもバンドが準備をしている間にマイクをセットしたりできるところから終わらせていきます。
4、セットができたら準備完了を伝える
準備ができたら準備が終わったことを伝えて下さい。もし声がなければ、こちらも準備が終わったかなーというタイミングで「準備いいですか?」と声をかけます。
恐らく、こっちから言わなければ延々と準備をしている人がいます。
準備できているのに爆音で弾き続けているギターやベース。角度をミリ単位で直し、叩いては直し叩いては直し叩いては直し叩いては直すドラム。コレなんの時間?状態に疑問を持たず何も言わないボーカル。
こんな時はPAから声をかけ進行しますが、準備ができたら速やかにリハーサルにいきましょう。この間も時計の針は進みます。すべては良い本番の為なんです、お願いします。
~小学校の朝の会~
ざわざわ、ぺちゃくちゃ、ごにょごにょ…
ざわざわ、ぺちゃくちゃ、ごにょごにょ…
ざわざわ、ぺちゃくちゃ、ごにょごにょ…
ざわざわ、ぺちゃくちゃ、ごにょごにょ…
…
先生「静かになるまで5分かかりました!!!(怒)」
このブチキレてた先生の気持ち今なら痛いほどわかります。
5、リハーサル開始~単音チェック
ではやっとリハーサルが開始です。
よろしくお願いしますと挨拶も済ませたら、まずは単音チェックからやっていきます。
おそらくベーシックなバンドでしたら
ドラム→ベース→ギター→ボーカル
という流れになるでしょう。コーラスマイクがある場合は各楽器のあとにやり、次の楽器にいくと思います。
この単音チェックはPA側が音の信号を確認して音量を決めて音を最適に修正してバランスを取る作業になります。
ですので、バンド側はPAの進行の通りに音を出してってもらえればいいのですが、一つ注意点があります。
それは、本番と同じ音を出すということです。
もちろんお客さんの入っていないリハーサルですしテンションも本番と違うのは理解しています。
全力だと喉の調子に影響があるなら「今80%くらいで本番はもっと大きい声出ます」と教えてくれる人もいます。それも一つの方法です。
もしリハーサルが50%の声量だったとします。それでちょうどよく聞こえるようにPAがバランスを取っていて本番でいきなり100%で歌ったらどうなると思います?
お客さんが耳を覆いたくなるような音量のボーカルがスピーカーから鳴ります。
ライン楽器がリハで50%で本番いきなり倍の音量になったら下手したらスピーカーが壊れます。
本番を想定したリハーサルをしなければ意味がありません。本番で音が吸われたり、上がったテンション分のカバーをするのはPAの仕事ですから任せてください。
PAが単音チェックでどんな作業をしているのかということもわかればより良いチェックができると思うので上級編として今度記事にしてみようと思います。
書きました↓
6、バンド全体で曲で合わせてモニターバランスを決める
単音チェックが終わったら曲で確認していきます。
それで、ここでは曲で演奏することによって何を確認するかというところですが、
- バンドが中音を決める
- PAがバランスや音の修正をして外音を決める
この二点が主ですが、順番は先に中音を決めることが望ましいです。
理由としては中音が決まらないと外音が決まらないんですね。例を上げると、外音のバランスが先に決まったとしても、中音でギターが小さかったのでアンプを上げるとなったら外音のギターの音も同時に上がってしまうんですね。そうなると外音はまたバランスを取り直すということになります。リハの最後の最後で「アンプ上げます」とかになると今までのなんだったん?ってなります。
ですので、まずはステージ上での音のバランスをとって下さい。全員がアンプで小さい音があると思えばそのアンプを上げればいいですし、自分だけ特定の音がほしければその音だけモニターから返してもらって演奏しやすい環境を作ります。
モニターの決め方や注文の仕方というのも漠然としていてどうしたらいいかもわからない人もいるかもしれないのでこちらも改めて記事にしようと思います。
書きました↓
7、中音が決まったら外音や照明などの要望を伝える
バンド側が中音を決めることがリハーサルの目的とも言っていいくらい重要です。
中音が決まった頃にはおそらく、そこの管理しているPAさんなら外音がもう決まっているはずです(その場所の現場に慣れていないPAだと時間がかかることもあるかもしれません。)
モニターさえ決まったら次は外音の確認で誰かメンバーが代表して客席へ出て外音のバランスを聞いてみたり、この曲はリバーブを深めでとか、この曲は照明は激しくなど要望をしていきましょう。
曲間での繋ぎや特別な演出があれば確認していきます。
バンドの持ち味を強調したり、他と差別化をはかりたいなど、サウンドやライティング、演出でのこだわりをしっかり伝えましょう。スタッフは味方です、無茶でなければ協力しますので何なりと言って下さい!
8、SEなどきっかけがあるものの確認
最後に登場SEなどがあればその確認をします。
SEのどのタイミングで登場するか、どのタイミングでバンドが音を出し始めるか、どこでSEを止めるか、どこで照明をつけるかなど確認して下さい。
確認を済ませたら実際にSEをかけて本番と同様にやってみます。そのまま1曲目の最初の方を演奏するとこまでやりましょう。流れがわかりますので。
9、その他の確認が終わればリハーサル終了
その他、確認しておきたいところがあればやっておきます。
なければ終わりです。
10、アンプのセッティングなどをメモリーして速やかに片付ける
リハーサルで準備したことを再現すれば同じ状態で本番を迎えられます。
そのためにリハーサルがあります。ですので、リハーサルの状態をコピーする為にアンプのメモリなどをメモします。最近ではみんなアンプのつまみを写真で撮りますよね。アンプだけではなく、エフェクターのつまみも動かないように注意してください。
キーボードなどライン出力の楽器もマスターアウトのつまみは必ず覚えて本番ではリハーサルと同じになっているか確認して下さい。
同じくPAもアンプの位置にテープを貼って本番も同じ場所におけるように”バミる”ということをしたり、マイクの立て方もリハーサルと同じになるように覚えます。PAのミキサーもリハーサルの状態をメモったりメモリー機能で保存したりします。
バンド側、PA側、どちらも本番でリハーサルと同じ状態を再現するためメモリーするのです。
次のバンドに早く引き渡す為といって、このメモリー作業をおろそかにしてはいけません。そこでは焦らずしっかりと!誰も急かせませんから!
そこまで終わったら急いで片付けです。ここからはナマケモノの食事風景だと「急げや」と煽られます。テキパキやりましょう。
しっかりリハーサルをすれば本番は楽しむだけ
リハーサルをないがしろにしていたら本番にトラブることもあるかもしれません。
しっかりとリハーサルで準備しておけば何も心配することなくライブをブチかませることができますよね。
リハーサルの手順、書き出してみると10項目もありましたが、あのリハーサルの30分の時間はすべて何かしらを確認する時間なんです。自由な時間はないです。あったとすれば早く終わって余った時間のみです。
アーティストとスタッフがそれを共有できていたら必ずいいライブに繋がっていきます。
【お詫び】
本記事の誤字脱字の確認やリライトなどで何度も読み返していたところ、「ナマケモノの食事風景かい!」の部分がスベっているんじゃないかと、とても気がかりになってしまいました。
しかし、実際に私がそう思ったことは事実であります。
”ナマケモノの食事風景”が想像できない故にスベっていると感じられるというのは最も恐れることでありますので、その食事風景の動画だけでも貼っておきたいと思います。
ご査収ください。
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