またコラムなんですけど、先日のTHE Wとその審査員だった粗品氏が話題になっていますが、その審査のスタンスがすごく響いてしまったので筆を執っています。筆はとっていません。
テレビで放送されていた大会本編よりも粗品氏のYouTubeでの総評の動画をもとに書いていることが多くなりますので興味ある方は見てみるとよいかもしれません。
まず一番最初にTHE Wの審査員をやる上で
「女やからおもんない、女のくせにおもろいとかそういった性差別は一切しないで、シンプルに芸人として面白いかどうかを真摯に審査します。これが公平。」
と説明をしています。これがものすごく当たり前のことなのですが突き刺さります。
M-1では女性芸人の活躍があまり恵まれないからTHE Wという大会を作ろう、これは一見ジェンダー平等風に見えますが、M-1は男性だけしか出られない大会ではないし、男性だけネタ時間が1分長くてOKなわけでもない、キングオブコントも同じR-1も同条件であるのに女性だけの大会があるのは逆に差別的であるのです。スポーツのように身体能力で勝負するものは分けて当然ですがそうでもない。女性はお笑い弱いから専用の大会用意するね、って弱いと決めつけて大会を作るほうが差別しているという視点。
性差のないジャンルで性別を分けることは差別だという考えです。
これまでのTHE Wの審査でもM-1と比べたら面白くないネタでも「面白かったです」と言うのは、THE Wの基準では面白いという目線を下げた審査と考えると、それは女性だけ下駄を履かせた審査として差別とも捉えることができるかもしれません。
下駄を履かせた審査ではなくフラットに評価するというのは、すごく当たり前なのに怖くてみんな逃げていた部分であるのですごく刺さったのでした。
なんだか初っ端から話がそれてしまいまいしたが、私が前のコラムでもさんざん書きましたが

これは私が音楽が好きで日本の音楽が海外でも活躍できるからと信じているからなんです。
あらゆるジャンルを聴くような音楽が好きな人と話していても、大衆音楽はそういうもの、一般の人が楽しんでるんだからいいじゃん、音楽好きは音楽好きで楽しもうというスタンスが多いです。
これってこれまでのTHE Wの審査と同じような気がします。ベテランの面白い芸人が面白くないネタを見て「面白かったです」といっているような。
けれど私はもっともっと日本には面白い世界でも通用するような音楽をやっている人を知っているのでそれがちゃんと評価される世の中になってほしいと思っているのです。
- 「面白くなかった、レベルが低い」
- 「おもろいことで笑わん、おもんないことで笑う」
- 「大衆ウケを重視する審査員ももちろんおるから俺みたいなホンマの面白を審査するやつがおってもええんやろ」
- 「老若男女みなさんに笑ってもらえる手前のネタが優勝するのもありえると思うんですけど、僕個人的には嫌なんで」
- 「かなりレベルの低い客でしたね。そんなタイミングじゃないのに拍手したがってる。」
- 「普段質の悪い客の前でしかネタ試せてないんよ、だからウケんねんアレ」
- 「アレ見てプロの人たちは、はい女芸人おもんないこういうことするやろーってサブイボ立ってまうんよ、主語デカなんねん」
- 「推し活や、お前らが相手にしてるのは。何しても笑うようなホームでばっかりやんなよ」
- 音楽界の粗品よ現れてくれ
「面白くなかった、レベルが低い」
粗品氏はズバッとこの単語を使ってましたね。
避けたくなる言葉ですが冒頭の宣言を聞けばある意味それが忖度のないジャッジなんです。
その上で言わせてもらいますと、日本の大衆向けの音楽業界は海外のレベルや芸術的な評価としてみると低いし面白くないです。
お笑いも音楽も数値で表せるものでもなく好みの大きいコンテンツなのでそこで感情論でぶつかることがあります。
しかし、粗品氏はそこを実績のあるプロとしてつまらないところを言語化して改善点まで審査していました。
私もジャッジできる部分も持ち合わせていますが音楽自体の構造的な部分まで説明できない、だから音楽界に粗品氏のような人が必要と言っているのです。
大衆向けにレコメンドされるミュージシャンと、例えばエイトジャムなどでやってるミュージシャンが推すミュージシャンって全く別物だったのはみたことはありませんか?
芸人界はコンテストでプロが審査して勝ったものがその後活躍しますが、音楽界はその会社が売ったら儲かるものが売れて終わりです。そこに音楽の本質や芸術性は関係ありません。お金になるかどうか。
だから早く、実績があって音楽にも詳しすぎて公平に忖度なくメジャーシーンをジャッジできる音楽界の誰かが登場してほしいんです。
「おもろいことで笑わん、おもんないことで笑う」
「間違ったお笑いの常識がテレビで放送されてて、テレビ見てる素人は笑い声があるから面白いと思ってまう、危険やな」
これ、本当にオーバーグラウンド大衆音楽はこれ、まさに。
テレビに出るミュージシャンはほぼアイドル。あとSSW、やボーカリスト、たまにバンドそんな感じ。
お客はファンという名の推し活。今日の衣装はなんだろう、そんな楽しみでしょうか。メロディやコード進行や演奏の上手さノリ、音楽的要素はその次の次の次の次の次くらいですか見られてるの。
音楽番組では今SNSで話題のこの曲を披露とか言って、テレビ見ている人はそれが流行ってるんだチェックしたほうがいい音楽なんだと勘違いしてしまう。危険やなです。
「大衆ウケを重視する審査員ももちろんおるから俺みたいなホンマの面白を審査するやつがおってもええんやろ」
大衆音楽にはホンマの音楽を審査する人が少なすぎる。
前のコラム記事にも書きましたので気になる方はそちらも見てほしいのですが、少なからずジャズ界隈のバックボーンがある人がオーバーグラウンドでも活躍していたりもしますがまだまだまだまだまだまだ少なすぎる。
季節柄なので紅白の出場者なんか見てもらえればわかります。ホンマに少なすぎる。
「老若男女みなさんに笑ってもらえる手前のネタが優勝するのもありえると思うんですけど、僕個人的には嫌なんで」
大衆音楽業界は手前が優勝しつづけています。
MUSIC AWARDS JAPANができて多少良くなっていけばいいですけど、というかMAJくらいが日本の大衆音楽の最低ラインになればかなり未来は明るいと思います。
もちろん老若男女楽しめる音楽も必要だとは思いますが現在ではそのバランスの偏りが大きすぎるの是正するのが急務です。
「かなりレベルの低い客でしたね。そんなタイミングじゃないのに拍手したがってる。」
大爆笑したら思わず拍手もしていた。これが本来の拍手笑いのはずが、拍手することが目的になってしまっていて、拍手したがる客が多いと訳が分からなくなる。
これも音楽だと、感動したりめちゃめちゃ心が動いたから手を挙げる、拳を挙げる、シンガロングする、ダイブする、モッシュになる、こういうことなのに今ではダイブしたいモッシュしたいここでシンガロングするのが楽しい踊るのが楽しいとそれが目的になってしまっている。
ミュージシャンを見ないでオーディエンスをまとめたがるやつまでいる。
すごく似てます。
「普段質の悪い客の前でしかネタ試せてないんよ、だからウケんねんアレ」
「だからバチバチの賞レースの品位が下がんねん、あんなんしたら。おもんない客の前でやってウケるから勘違いして全国の賞レースでああいう愚かな下りをやってしまうねん」
これも音楽界でも思い当たります。
ハンズクラップする場所を作ったり、「1!2!」と客が叫ぶための部分を作ったり、スカダンする場所作ったり、ヘドバンする場所を作ったり、サビで客の両手で花咲かせたり、無理やり熱い感じに持ってくMC、客側にミュージシャンが迎合するのは立場が逆になってしまっている。
良い音楽を追求するお客さんではなく、ジェットコースターでもいいしラウンドワンでもいいし大飲み会でもいいしライブでもいいし楽しいことを体験したいだけの客に向けて音楽を作ってしまっている。
そんな客に向けた音楽を世界的に権威のあるアメリカやイギリスの音楽賞の審査員に見せたらどうなるでしょうか?鼻で笑われそうですよね?
「テレビを通してあれがおもろいと思うやん、あれ洗脳やで。お笑い界全体後退させてどうすんねん。前進めな。」
めちゃめちゃ響きます。
「アレ見てプロの人たちは、はい女芸人おもんないこういうことするやろーってサブイボ立ってまうんよ、主語デカなんねん」
アレっていうのは上であった客に迎合するものを作るってことですね。
音楽界も、ほらロキノンはとか、ほらラウド系はとか主語デカなんねん案件抱えています。
ロキノンだってラウド系だってかっこいいバンドたくさんいますが、はいココ客に寄せて作ったなってわかることも多いです、プロ目線でいうとそのサブさは粗品氏の言っているそれと全く同じ感想になります。
「シャバいシャバくないは判定できると思うねん、あれがおもろいってなるお笑い界は良くないよ。」
そんな客が喜ぶ部分を意図的に作っているミュージシャンもシャバさの判断はできると思います。今一度、自分が50歳60歳になっても胸を張ってできる音楽なのかとか、偉大な自分が尊敬するミュージシャンに見せても恥じない曲なのかと考えてみてほしいです。
「推し活や、お前らが相手にしてるのは。何しても笑うようなホームでばっかりやんなよ」
客向けに制作してしまうのは、こういった背景からでしょう。
バンドも売れてないと知らないライブハウスで自分らのことを知らない客の前で演奏するわけでそこで何か他とは違うものを見せないといけない、新しいものを生み出さないと頭一つ抜けることはできない。そういった土壌もありますが、そのうち人気になってくるとワンマンが増えお客さんはファンになり信者になります。
フェスであっても最近では同じジャンルのミュージシャンが固められ、同じ名前がラインナップされてタイトルだけ変えたようなフェスばかり、当然お客さんも変わりません。
その中ではみんな良かったしか言いません、良くなくても。
それに甘んじてはいけないのですが、商業的に成功しているのが良い音楽として評価されるともうそこで音楽としては終わりです。
売上が良いものが音楽としての価値が高いと本当に思っている人はこれを見る意味はないので、テレビの音楽番組を見ていたら嫌な気持になりませんのでそちらをおすすめします。
音楽界の粗品よ現れてくれ
固有名詞を出して書いていないので読んでて想像しづらかったり、主語が大きく捉えられてしまうかもしれませんが、そのあたりは個別ファンの感情論で殴られたくないという予防線なのでご了承ください。
言いたいのは日本の音楽は素晴らしいよってこと。ただ、その土壌が腐りすぎているってだけ。
大衆音楽がまともになって日本の音楽が世界的に評価される未来になるように粗品を待ちます。
権威と実績と影響力があればなぁ。。。


コメント